歯の移植

TRANSPLANTATION

歯の移植は、自分の使っていない健康な歯を、必要な場所に移植する治療方法です。移植できる歯の条件やインプラントとの違いについて解説していますので、ご確認ください。

「抜歯してインプラントが必要、と説明された」
「歯の移植はインプラントとどのように違うのだろう?」

上記のような方に向けて、自分の歯を移植する「歯の移植」についてお伝えします。

歯の移植を簡単に説明すると、歯を失った部位に、他の部位から採取した天然歯を移植する治療法です。
聞き馴染みのない治療法かと思いますので、ここでは治療の特徴について具体的に解説します。

移植には条件があります

歯の移植は、移植する歯の状態が良好でなければ、おこなえません。

たとえば、親知らずや使っていない奥歯は、移植に適した歯である可能性が高いです。
具体的には、主に以下の歯を移植に用います。

  • 歯周病にかかっていない歯
    移植する歯の歯根膜が十分にある必要があります。
  • 歯の根っこが単純な形
    単純な形をしているほうが歯根膜を傷つけずに済みます。
  • 移植先と同等サイズの歯
    抜歯する歯と移植する歯の大きさが極端に違うと移植できません。
  • 使わない歯
    前歯を抜いて矯正する場合などは、前歯から移植することもできます。

また、患者さんの健康状態も重要です。糖尿病、腎不全、自己免疫疾患でのステロイド使用などがある場合は、移植のリスクが高くなります。
移植できる歯があるかどうかは検査してみなければわかりませんので、一度ご相談ください。

もし移植できる歯がない場合は、インプラントにて対応します。

歯の移植とインプラントの違い


歯の移植とインプラントは、失われた歯を補う方法として似ていますが、「使用する材料、治療方法、治療後の感覚、機能」には大きな違いがあります。
なぜなら、歯の移植は自分の歯を使用するのに対し、インプラントは人工物を使用するからです。

具体的な違いについて、以下の表にまとめましたのでご確認ください。

項目歯の移植インプラント
噛み心地自然鈍感
防御機能
適応能力歯の移動などの変化に適応しやすい歯の移動・噛み合わせの変化へ対応ができない
長期安定性インプラントより短い(5年生存率が90%程度)移植より長い(20年生存率が90%程度)
治療の条件移植できる歯が必要どんな場合にも入れられる

少しわかりにくい「防御機能・適応能力・長期安定性」については、以下をご確認ください。

  • 防御機能
    インプラントは人工物であるため、天然歯にあるような防御機能がなく、細菌感染に弱いです。
  • 適応能力
    天然歯は形や位置を変えながら生体の変化に適応しますが、インプラントは適応しません。
  • 長期安定性
    移植歯は神経が死んでいる状態であるため「歯の割れ・虫歯」などのリスクが高まります。対して、インプラントは98%が5年以上もつといわれています。

歯の移植を推奨する理由


当院では、移植歯の状態、年齢などの条件が整っている方には、歯の移植を推奨しています。なぜなら、自分の歯を利用する移植の方が、より自然な歯の状態を実現できるからです。

違和感のない自然な噛み心地を取り戻せますし、感染症のリスクやメンテナンスの手間も軽減できます。

以下に歯の移植のメリットをまとめましたので、ぜひご確認ください。

自分の歯だから自然な噛み心地を再現できる

歯の移植は、自分の歯を使うことで自然な噛み心地を再現できます。これは、天然歯にある「歯根膜」が関係しています。

歯根膜は、触覚や痛覚の感覚があり、噛んだときの食物の硬さや噛み合わせの強さを敏感に感知する役割をもっています。一方、インプラントには歯根膜がないため、感覚が鈍くなります。そのため、過度の噛み締め付けに気づきにくく「顎に負担がかかる・インプラントが折れたり割れたりする」などのリスクが高まります。

歯根膜が残る自分の天然歯を移植することで、これらのリスクを軽減し、自然に近い咀嚼機能を維持できます。現状では、人工物ではない歯を入れられる治療は、歯の移植のみです。

感染症などのリスクがインプラントより少ない

歯の移植は、インプラントに比べてリスクを抑えられる治療法です。
なぜなら、天然歯には防御機能が備わっているからです。

インプラントは人工物のため、天然歯ほどの防御力がありません。細菌に対する抵抗力が低く、感染しやすいデメリットがあります。小まめなメンテナンスをおこなわないと、インプラント周囲炎を引き起こす可能性があります。

一方、歯の移植では防御機能のある天然歯を使用するため、これらのリスクを最小限に抑えた安定した経過が期待できます。

自然歯にもっとも近い機能を取り戻す

当院は、患者さんの生活の質を高めることを目的とした歯科治療を大切にしています。その理念にふさわしい治療法として、自分の歯を活かせる歯の移植を推奨しています。

歯の移植以外の治療法は、人工物を入れる方法であり、自然で健康な歯を長持ちさせることはできません。また、天然歯と比べると機能面でも劣ります。

「抜歯をして、インプラントを入れる」という方法もありますが、それだけが最善の治療とは限りません。当院は、より自然な機能を取り戻せる治療法として、歯の移植を一つの手段として提案しています。

これらの治療の考え方について、以下のページでも解説しておりますので、ぜひご確認ください。

歯の移植の治療費用

歯の移植165,000円(税込)